冷泉家は、藤原俊成、定家以来の歌道家にして、貴重な典籍を伝える名家です。その冷泉家の文庫「時雨亭文庫」の調査主任である著者が、実見調査にもとづき、冷泉家の所蔵にまつわるエピソードを紹介するとともに、対立する家の系統の本が冷泉家に入ったのか、などといった、蔵書の成り立ちを詳述しています。とにかく、本物の冷泉家所蔵本を実見した方の重みを感じさせる本です。内容はやや専門的で、為家、為相、為氏、為和など、似たような名前がやたら出てきますので、和歌史にある程度知識がないと混乱するのではないでしょうか(著者も混乱したのか、60頁9行目に「為氏」とありますが、ここは「為家」の間違いです)。また、勅撰集の後半、いわゆる「十三代集」は、よほどの専門家でないと馴染みの薄い歌集です(著者にとっても馴染みが薄いらしく、95頁の「二条・京極・冷泉家略系図」に付された撰集した勅撰集の中に、「為家 10新後撰 11続古今」とありますが、為家が撰者となった10番目の勅撰集は「新後撰」ではなく「続後撰」の間違いです)。ということで、中世和歌史の知識がある程度あり、書誌学の素養もある方に薦めます。