有識者のべ37名が、”本の未来”について語ったエッセイ集。書店・古書店・図書館・取次・装丁・編集、そして練達の書き手・読み手による議論はどれも読み応えがある。紙の本への愛情を説くもの、電子書籍の欠落を語るもの、読書の本質は変わらないと主張するもの、さまざまな視点からの意見は、実にバラエティに富む。
ただ間違いないのは、電子化への流れは抗えないということと、紙か電子かという二項対立でものを考える必要はないということだ。この二項対立の構造は、委託制、再販制に基づく旧来型のプラットフォームか、Amazon、Appleなどのプラットフォームかという、ビジネスモデルの構造に根差しているところが大きく、読書そのものを二項対立で捉える必要は全くない。
本書によって得た気づきは、昨今の電子書籍の議論によって、欠落している視点が二点あるのではないかということだ。一つは、書き手の視点による議論が少ないということ、もう一つは、ブログをはじめとするネットメディアからの視点で考える議論が少ないということだ。
◆電子書籍の議論で欠けている視点
・編集の縦軸と横軸の広がり
本を送り届ける側にとって、紙の本ありきで物事を考える必要がないというのは、非常にポテンシャルを大きくしてくれると思う。土台から考えることによる負荷は大きくなるかもしれないが、選択肢が増えることによる編集の横軸の広がりは表現の多様性を引き出すことになるだろう。また、送り手側でのパッケージをどこまで行い、読者の参加感をどのようにデザインするかという、編集の縦軸の広がりも、新しい世界観をもたらしてくれる。
・溶けていく境界線
電子書籍を、紙の本とネット・コンテンツの中間に位置付けて考えてみる。電子書籍の登場による影響は、紙の本とは反対サイドにいるネット・コンテンツも同程度受けることであろう。”体系化されたストック情報”のポジションに電子書籍が位置どることになると、隣接するネットメディア、ブログメディアはよりリアルタイム感のあるフロー情報に特化していき、TwitterやFacebookとの境界線があいまいになっていくかもしれない。また、短文の電子書籍、長文の有料メルマガなど定義をあいまいにする表現物の登場も予想される。そしてその誰にとっても、電子書籍の登場は、出版することへの敷居を今までより格段に低いものにしてくれる。
今後想定される、本の送り手の増加というものを考慮すると、送り手側の視点こそが、今後の電子書籍の命運を握るのではないかと思う。