著者のエッセイなどで翻訳や文学に対する考え方も知っていたし、翻訳したものも読んだことはある。だから、本書を期待して手に取った。取り上げられた作品は、かなり話題になった作品が多いが、思った以上に幅の広さを感じる選択も見られて、目次を見るだけでも楽しい。
ただ、著者の責任ではないのだが、新聞に掲載された書評が多いので、短いものがほとんど。約300ページで180本の書評がおさめられている。ざっと計算したところ、400字詰原稿用紙で2枚前後のものが多い。しかも、1本で3冊、4冊の本を取り上げているものもある。だから、どうしても、物足りなさを感じてしまう。
例外は、村上春樹氏の『アフターダーク』に関する書評で、約10枚ほどあり、さすがに読み応えがある(これは雑誌の「文学界」に掲載されたもの)。これを読むと、著者にもう少し条件の良いフィールドで書いてもらいと感じてしまう。
著者が与えられた枚数の中で、ベストを尽くしているのは分かるが、残念ながら取り上げられた本に食指が動く前に書評が終わってしまったことも少なからずある。それでも、翻訳者として活躍している著者の“選択”そのものはかなり参考になった。
本書の評価とは関係ないが、新聞の書評の問題点を改めて考えさせられた。