小説、
じゃない、
物語だ。
にしてもなんだこれは。今までこんな本があったのか。
オレは聖書なんか読んだこともないが、読むつもりだってないが、聖書ってこういうものかもしれないなと思う。
技術的なことなのかもしれないが、物語はゆっくりと拡散する。自ら末裔を悟り、血脈や運命の無限の広がりの中の一点がそのままかすんで消えていくような感覚の中、これ以上ないほど物語は散り散りになる。普遍化し、色も意味も失っていく。そしてそこから、じょうごに吸い込まれていくように、急速に収束する。悟りなど忘れたとばかりに、色づき凝縮する。
その美しさ。
アブノーマルだ。
物語全体を貫く、でたらめで、倒錯した、強烈な生々しさ。
卑近な例えで申し訳ないが、宮崎駿の「千と千尋の神隠し」に似た、子供のころ誰もが見る悪夢のような、人間の無意識に持つ原風景とやら、混沌、そういう景色に肉薄した作品なのかもしれない。あーなんだそれオカルトくせえくだらねーオレは。
ちがう、この物語、圧倒的におっさんだ。ナマモノだ。
間違いない、この人だけが生み出せる世界観は。
文字で、言葉で、勘違いでいい、福音。
それを為せることは、光より速いニュートリノがどうとか、オレにはそういうレベルで迫る事実だ。
ただ今回は徹底的にそぎ落とされた感じがない。あまりに洗練されすぎてオレには判別がつかないだけなのか、迷いの中で書かれた作品なのか。
それともこういうのを巷では、一皮剥けたとでもいうのか。
イヤラシイ。