本書の推理がどこまで真実に近いのか検証する術を、私たちほとんどの一般人は持っていないので、どれだけ真相を明らかにしたかという点で本書を評価することは困難だろう。だからどれだけ納得できる方法で、公開情報のなかの不自然な点と点を結びつけていくのか、背後に広がる大きな闇をどれだけ固有名詞とともに明らかにできるのか、読者は著者の組み立てた仮説をただ追いかけることしかできないが、その推理に一定の合理性があるからこそ、著者は読者を獲得しているのだろう。
本書の中でも、ライブドア事件の渦中、懐刀の野口(エイチ・エス証券副社長)が沖縄で不自然な自殺を遂げた(’06)のは記憶に新しいだろう。
当時のライブドアは大規模株式分割やMSCB発行など、新しい手法を駆使した資金調達で市場を賑わせていた。が、ある日特捜による捜査がはじまり、一気に堀江はじめ幹部が逮捕され、ライブドアという会社の成長も止まる。堀江の実刑は確定したものの、結果的に粉飾決算の規模としては日興証券やオリンパスに比べて小さく、いろんな意味でライブドアという企業の栄枯盛衰が市民にとっては理解を超えていた。
本書の言うように、株式市場が堅調であった当時、市場という賭場で裏社会のシノギが活況だったと捉えるのが合理的だろう。そのシノギの窓口がライブドアという企業であり、その取りまとめ役が野口であった。野口が裏社会の逆鱗に触れたか不要になったかして、沖縄で消されたと考えるべきだろう。妻が絶対に主人の持ち物ではないという服が落ちていたり(それを家族以外の誰かが警察に取りに来たり)、非常ベルが二度なったり、ためらい傷らしきものが利き腕の手首にあったりと、不自然極まりない状況を「自殺」と早々に判断した警察にも疑問が残るが、ライブドア周辺の紳士たちをみると、消されるべくして消されたという状況には納得がいく。