物語は、研究所創設のため、スタッフが集まるところから始まる。「最高の研究を達成するただ1つの方法とは、最高の研究者を雇い、彼らを命令、義務教育、締め切りといったものから自由にしておくことである」という理念のもと、全米から最高の頭脳が集まってくる。そして、コンピュータ史上稀に見る勢いで、その後のコンピュータの流れを方向づけるような、画期的な発明が行われていく。「伝説的な」発明に取り組むその当時の研究者たちの熱気と興奮とが、本書からリアルに伝わってきて、わくわくさせられる。
また、登場人物も魅力的である。取りすました天才などではなく、あまりにも人間的な人物が多い。自分の能力ゆえに尊大になり、独善的になって他の科学者たちと衝突する。自分たちの画期的発明が、本社の重役たちにまったく評価されないことにフラストレーションを爆発させる。正反対の性格の2人が、見事なチームワークを発揮する。こんな様子が生き生きと描かれているのは、当時を知る研究者をはじめとした多くの人に丹念な取材を重ねた、著者の努力と力量のたまものであろう。
ゼロックスは、パロアルト研究所の画期的な成果のほとんどを利益に結びつけることに失敗し、研究所も一時の輝きを失ったという結末は、すでに私たちの知るところである。本書は、ひと握りの科学者たちの学術計算用ツールから、今日的な誰にでも扱えるコミュニケーションツールへと、コンピュータを変えていく天才たちの格闘を軸に描きながら、ゼロックスのような結末を迎えた企業、研究組織、そして人間のダイナミズムをも鮮やかに浮かび上がらせている。(福島紀行)
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しかし、ゼロックス自信はそれらの技術のほとんどを商品化せず、結果としてマック、ポストスクリプトなど他社で実現され、一世を風靡しました。アップルのジョブスなどにより、このことが伝説として伝えられ、「大企業の間抜けさ」を語る一つの定番ともなっていますが、本書はこの伝説をより客観的な切り口で検証し、会社の問題はもちろん、科学者側の問題、時代的背景も含め、PARCで何があったのかをリアルに伝えてくれます。
ジョブスがPARCを見学したのは2回、しかも訪問前から見るものの内容をほぼ知っていた、など、興味深い事実が多数紹介され、とにかく面白い一冊でした。コンピュータの歴史について少し知識がないと難しい部分もあるかもしれませんが、登場する科学者のキャラクター、科学とビジネスを巡る歴史的事件の魅力満載の本書は、興味のある方にはお薦めです。
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