本書は異なる3つの観点から読むことができると感じました。
そのため、3つの観点でそれぞれ学びと気付きを得られます。
1. 旭山動物園について知る
2. コンサルタントのモノの見方を知る(ビジネスを分析・整理しケース化する視点)
3. 「経営の観点」で優れた事例を知る
以下、それぞれの観点についてレビューを書きます。
1. 旭山動物園について知る
本書で書かれている旭山動物園のこれまでの取り組みや飼育展示係員の方々の
コメント等は、既に他の書籍を始めとする様々なメディアで語られた内容です。
ただ、本書では色々な要素をうまく整理してあるので分かり易いです。
そのため、初めて旭山動物園について知る人は本書で基本知識は得られますし、
既にご存知の方も、記憶や知識を再整理できると感じました。
2. コンサルタントのモノの見方を知る(ビジネスを分析・整理しケース化する視点)
著者はローランドベルガーの会長であり、早稲田ビジネススクールで講師もされておられます。
旭山動物園の再生ストーリーは、既に5年前から教材として使われておられるそうです。
本書では、世の中の事象(事例)をどのような切り口で捉え、ケース(教材)として扱って
おられるのかという視点も学ぶことができます。
「経営視点」で捉えることの是非はありますが、実際の取り組みをどのような軸で整理し、
組み立て、構成しているかという視点は、参考になる点が多いです。
3. 「経営の観点」で優れた事例を知る
本書は、旭山動物園の視点を経営学的な視点で捉えたという位置付けの書籍です。
但し、著者も下記2点については気にされているようです。
※このような問いがあったことで、著者の人間味を感じることもできました。
※「現場力」に精通しておられる著者だからこその問いだと感じました。
(1)経営視点で見ること自体が関係者の方々に失礼ではないか?
(2)成功の秘密を因数分解して考察したが、大事なことを見逃しているのではないか?
(1)
1点目は、あくまで物事を捉える視点の1つであり、意外にもこれまでありそうで無かった視点
であるので、個人的には面白い視点であり、そこに本書の価値があると感じました。
(2)
2点目は、恐らく本質は「動物」にあるためであり、あくまで本書では展示の対象としてしか
捉え切れないことが要因であると感じました。つまり、大事なことは動物の存在そのものであり、
更には、動物に向き合っておられる飼育展示係員の方々が感じておられることであるため、
そこに、経営視点のみで捉えた場合の違和感が生じるのだと思いました。
「経営視点」という観点においては、本書では下記が5点が印象的でした。
1.14枚のスケッチは夢を語り合った結果である。
・スケッチは旭山動物園が最も苦しい時期に書かれたものだそうです
・当時を振り返り「時間を忘れて、理想を語り合った」というコメントが印象的でした
→皆の思いを具現化し共有した上で、その思いを持ち続けることの大切さを学べました
2.揺るぎ無い信念がある。また、それが職員の皆さんの中で、共通の「軸」となっている
・共通の軸を「串団子」に例えて話されます。「串団子」は本書のキーワードの1つです。
・信念が揺るがないのは、個々人の「原体験」に基づくため(→原体験が幾つか紹介されています)
・職員の皆さんが、お仕事に対して「使命感」を持って取り組んでおられる
→「頭」ではなく「心」で共感し、価値観が共有されていることの素晴らしさを学べました
3.制約や不利な条件を克服する強さがある
・立地、規模、予算不足、スター(パンダ等)不足等の多くの制約条件受け止め、対応されています
→制約に捉われることなく個々が自ら考え、生み出し、作り上げていくことの強さを学べました
→自分達で創造したものだからこそ、そこに強い「想い」があり、それが伝わるのだと思いました
4.個々の「意識の変化」によって、組織がより一層強くなる
・組織や個人の動機付けによって、「意識が変化」していく過程を学べます
・人が変われば組織が変わる、組織が変われば人が変わることが実証されています。
5.職員の皆さんの素敵な姿勢:特に印象的な言葉が3つありました(他にもたくさん登場します)
・お客さんは喜ばせる相手ではなく、動物のすごさを伝える相手
・動物のすごさや魅力を上手に伝えることができれば、感動につながる
・動物園のファンになってもらわなくてもいい。動物のファンになってほしい
最後に、14枚のスケッチ構想のうち、まだ35%しか実現できていないという元園長の言葉が
とても印象的でした。これからも上記No.5のような素敵な姿勢を持った方々によって、
どんどん感動が生み出されていくのだと思いました。