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未来のための江戸学 (小学館101新書 52)
 
 

未来のための江戸学 (小学館101新書 52) [単行本]

田中 優子
5つ星のうち 2.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 777 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容紹介

江戸時代はどういう時代だったのかを突き詰めていくと、目指すべきこの国のカタチが見えてきた! 江戸文化の本質は「循環」と「因果」の価値観であった。江戸時代研究の第一人者による、過去と未来をつなぐ新講義。

登録情報

  • 単行本: 256ページ
  • 出版社: 小学館 (2009/10/1)
  • ISBN-10: 4098250527
  • ISBN-13: 978-4098250523
  • 発売日: 2009/10/1
  • 商品の寸法: 17.4 x 11 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 2.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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形式:単行本
少し以前から江戸と言う時代に興味があって、関連する本をたまに開いたりしている。筆者の田中教授についてもその方面の権威として何冊か読ましてもらったところだ。

タイトルにあるように江戸という時代を考えることによって、私たちの現代や未来を考えようと目論む本書。歴史認識とともに語り口は明快で、非常に分かりやすい本といえるだろうと思う。詳細はともかくとして、最後に筆者が語って強調するのは、江戸には「循環」と「因果」との考え方があったが、私たちは江戸の崩壊とともにそれを忘れ去っているという点。つまりは、今の環境問題や飽くことにない金権体質・成長志向、能力主義・成果主義につらなる考え方ということだろう。田中先生が本書でも強調しているかつてあった、日本の「始末」の思想というのは分かりやすい。古着は最後まで使い尽くし、紙を燃やした灰や糞尿にいたるまでムダにしなかったというあの例示だ。いまのようなムダや使い捨ては江戸時代には考えられなかったという視点である。

もちろん、筆者も江戸のすべてが素晴らしいと言っているわけではないわけで、歴史学的に見た検証もそれなりに行われている。現代に残していい江戸と、そうでない江戸についても言及をしている。身分社会の問題などはたしかに一筋縄ではいかない問題だろうが、そことは別の生活意識とか人間同士のそれぞれの関係を考えるときに、こうした本によって以前を見直すのはいいことなのではないだろうか。ゴミの問題やエネルギーの将来を考えるとき、本書のような語りかけと宗教までを含んだ「因果」の思想――ものごとには原因と結果があり、浪費すればそれらのものはやがてなくなっていくことを考えることは重要と思う。あらためてその事実を痛感させられた。いまの浪費社会に生きているからこその所感である。

「未来のために」といわれるように、少し以前を振り返って現代を考え直す、評価し直して将来に備えるのは大切なことではないだろうか。そんな意味では、いいタイミングでの好著であるように思えた。
このレビューは参考になりましたか?
21 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ishilinguist トップ500レビュアー
形式:単行本
筆者によると、江戸時代というのは「循環」の価値観があり、「因果」(原因と結果)を検証していくのが本質だという。これを失った近代日本は勝ち負けや賃金ばかりに価値観を置き、自然や文化を破壊してきた。そして多くの資本主義や産業社会の矛盾や問題に直面している。そんな中、江戸を学ぶことで、未来を生きるための指針を見出そうというのが「江戸学」なのだそうだ。
  戦国時代末期から19世紀まで、なぜ江戸時代という時代が成立し、終わったのか、明快に論じている。小学館の「全集日本の歴史」に負うところが大きいが、それらのダイジェスト・エッセンス版ということもできよう。しかしまた豊富な事例の詰まった、密度の濃い一冊である。
 やや政治的に左よりな主張が気になる点もあるが、大筋において、多くの事例をあげ、客観的に江戸時代の社会・文化を公平にとらえ直す。閉鎖的な社会などではなく、近代西欧とは異なるロジックに基づく、戦争とは無縁な、精神的・文化的に豊かで平和な社会だったのである。もちろん、ただ諸手をあげて礼賛するだけではない。きちんと批判するべき点は批判し、未来の社会への教訓を引き出そうとしている。
このレビューは参考になりましたか?
19 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 海人 トップ500レビュアー VINE™ メンバー
形式:単行本
田中優子といえば石川英輔、杉浦日向子とともに江戸ブームの牽引役である。しかし本書からにじみ出る田中のスタンスは、江戸社会を「循環する一つのエコシステムとして評価する」石川や「江戸の情緒や風俗を愛着を持って描く」杉浦とはかなり違っているようである。

本書における江戸時代とは「アジアを侵略した」二つの時代、豊臣政権下の日本と明治以降の近代日本、この二つの時代に挟まれた、「アジアの外交秩序に積極的に参加しようとした」「平和」な時代ということになる。つまり、田中は、江戸時代そのものを評価しているのではなく、あくまで、日本の「アジアを侵略した」二つの時代に対するアンチテーゼとして江戸時代を評価しているのである。

だが、田中のように一方的に日本を「アジアを侵略した」「邪悪」な存在と決めつけてしまうと、「被害者」として設定されたアジアは常に「正」であり「善」でなければならなくなってしまう。

そのために、あちこちで、おかしな歴史認識にぶちあたり「どういう風に解釈したらこうなるのか?」と、江戸から学ぶと言うより、田中個人の見識や人間性の方に興味が行ってしまう。

特に日本に直接「侵略」の被害を受けたとする朝鮮に対しては極めて同情的であり、たとえば文禄慶長の役を一貫して「侵略」と表現する一方、高麗が元とともに日本を「侵略」した元寇を「日本征討」と記述している。おそらく田中の中では「邪悪」な日本を「正善」な「アジア」が懲らしめると言う構図なのだろうが、同じ行為でありながら一方を「侵略」、一方を「征討」とするのでは客観的、公平な記述とはいえないだろう。

そのほかにも、文禄慶長の役を「朝鮮戦争」と記述していおり(朝鮮戦争と言えば1950〜1953の韓国と北朝鮮の38度線を巡る戦争だと考えるのが一般的だろう)、また江戸時代には存在しなかった「朝鮮民族」(民族と言う言葉自体、明治日本において、近代思想の導入期に「nation」の訳語として作られた言葉で、もし江戸時代にそれを言うなら「朝鮮人」が適切だろう)と言う言葉を使っており、歴史用語でも正確さを欠く。

全体として朝鮮韓国の歴史認識をほぼ丸呑みしており、田中の周辺に田中の思想に影響を与えるような、そういう方面の人物がいるのだろうかと言うところまでかんぐりたくなる。

ところで、田中といえばTVなどで見る凛とした和服姿が思い浮かぶが、本書で田中の思想を知れば田中の和服の意味も自然と分かってくるだろう。田代和生の「朝鮮通信使と日本人―江戸時代の日本と朝鮮」によれば、現在の和服は江戸時代に完成したものだからだ。つまり、田中にとって江戸時代に完成された和服を着る意味とは、洋装を近代化のメルクマール、指標とした「アジアを侵略した」近代日本を拒絶するシンボルなのである。

本書は江戸から学ぶというよりは、むしろ田中のアジア主義思想に合うように江戸時代や同時代のアジアの歴史を歪曲し田中にとっての理想の江戸時代像を作り出し、自らの主張に説得力を持たせるために利用している。そのため、随所で田中独特の強引な解釈がなされており、本来の目指すところである読者が江戸時代から教訓を引き出すと言う点に関してはあまり役に立ちそうにない。

もし読者が、本来の趣旨である「江戸」という一つの文明形態から未来につながるヒントを得たいなら、偶然にも同時期にほぼ同じ趣旨で刊行された、歴史資料を用いて客観的に歴史をとらえることに定評のある東京大学史料編纂所教授である山本博文の「江戸に学ぶ日本のかたち (NHKブックス)」の方が適切だろう。
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