明治維新の最大の課題は国民国家の建設であった。何に主眼を置くかで4つの路線(西郷に代表される強兵、大久保の富国、板垣の議会、そして木戸の憲法制定)があったと著者はいう。本書は明治初年の政治過程を4路線の対立として描き出す。本書を読むと大久保独裁政権なるものが富国路線の勝利を意味するのでなく、明治政権の分裂に過ぎないことが分かる。その反面、桂小五郎時代には颯爽としていた木戸孝允が明治政府ではパッとしない印象を与える理由も分かる。木戸は政策の執行官ではなく国民国家のデザイナーだったのだ。明治憲法の制定といえば後年渡欧した伊藤博文と睦奥宗光の名がすぐ出てくるが、明治の政治過程を国民国家の建設という観点から見たとき、木戸亡き後木戸『派』(そのようなものがあったかは疑問だが)を代表する立場にあった井上馨をもっと重視する必要がある、というのが著者の主張。板垣派の議会論に対する評価は辛口。