裁判員制度導入にあたり、有名な「永山基準」の元になった筆者の作品を、ぜひ読んでおきたかった。 一気に読みきった。印象に残ったのは筆者の幼少期の痛いほどの魂と腹と知識の「飢え」だった。また無知と暴力に満ちた家庭に育った筆者が、弱冠19歳で4人もの尊い生命をライフルで奪い獄中に入って後、初めて貪るように本を読み学んだであろう文章力の確かさと、長年目にしなかったはずの風景スケッチの緻密さとにも驚嘆した。罪を犯す前に、何とかならなかったものか、してやれる事はなかったものか、と繰り返し呟かずにいられない。 筆者の死刑判決・執行は、私はその判決文も読んだが、惨めな生育歴を考慮しても、罪の重さを考えれば、納得に値すると思った。しかし裁判員制度が始まる前に、この本を読んでおいてよかったと思う。読まずに裁く立場になり、人を裁いたら、多分私は生涯後悔しただろう。最初は反抗していたが、死刑決定後、学ぶことに救いを見い出し、獄中で穏やかに執筆を続け、しかし執行時には再び暴れたという、破滅的な筆者の人生。彼は「心のアバシリ」に、死刑という形を取ってでも、どうしても帰らずに、いられなかったのだろうか。