基本的にこのシリーズは短編集なのだが、なかには長編というのもあるのだ。また違った味わいで楽しめる。
短編に比べると微妙にルースかもしれないが、流れによる面白さがあって一気に読める。紋次郎の話というのは結局アクションよりも心理だろうという気がしているが、ここでもそれは同じ。また、女性キャラクターの描き方にはかなり深い絶望がありそうな気がする。作者の人間観、女性観の問題だろうか。
恨みを買った相手の縄張りを避けて銚子に行くべく船に乗った紋次郎が、嵐で流されてなんと八戸まで流れ着き、何しろ渡世人などいない東北だから(この辺の時代の事情も面白い)、生きるために必死で関東に戻ろうとする際、たまたま拡張計画で東北に遠征したかの有名な大前田一家の30人と事を構えることになる、という話。
このシリーズ、「旅人」の話なので、しかも江戸からの街道沿い、というので、旅の読み物の魅力や江戸の風物の魅力があるのも人気の要因の一つかと思う。今回はふだん登場しない東北ということで、なにしろ相当なスピードで移動するからじっくりではないのだが、あれこれ地名がどんどん出てくると、それも楽しい。