こんな分厚い本、通勤で読めないし、就寝前の楽しみに読んで、それでも1カ月はかかりませんでした。ただ、楽しい、読んでて快いパートはそれほどないです。というより、人類最強の木村政彦が、力道山の八百長破りに屈した、人生ほぼ唯一の敗北への悔恨を追体験することが多かった。私は歴史は1エピソードくらいで大きな流れは変わらないと思っていますが、この敗戦は日本の格闘技史を間違いなく変えたと思います。
木村が本来の力で、力道山を逆に八百長破りのセメントで潰していれば、プロレスは早い段階で総合に、柔道はオリンピックスポーツではなく本来の護身と打撃含め何でもありの総合格闘技を指すものになっていたかも。多分ジャイアント馬場はプロレス転向しなかったでしょう。
しかし、内容の色んな意味での凄まじさに引き込まれます。練習の凄まじさ、牛島の凄まじさ、木村の凄まじさ、ライバルの凄まじさ、戦前高専柔道の凄まじさ、グレイシー一族の勝利への執念の凄まじさ、弟子と拓大柔道部の凄まじさ、力道山の成功への執着・計算高さの凄まじさ。そして膨大な取材と無駄のない構成の凄まじさ。圧倒される思いで読みました。
色々思う事はありますが、ほぼ終りのほうに、天覧試合を勝利した、牛島・木村の打ち上げか何かのツーショット写真が良いです。この牛島の誇らしい顔、木村の笑顔に感動しました。長い文章を読んできて、その写真に万感迫ります。
私は柔道も拓大も無縁ですが、とても良い本に出会いました。優秀な脚本家がいれば、昭和史の素晴らしい国民映画になると思う。