現実感と空想感、充実と空虚などの狭間を描き、いつものことながら不思議な読後感を抱くことができる「片岡ワールド」が全開。さらに、本作では詩人である女性を小説の中に登場させ、思いついたフレーズを順序や状況に関係なく書き連ねた上で、後々につなげていく作業を紹介しており、意表をつくタイトルづけのセンスを見せてもらった気がする。
本書のタイトルも素敵(読めば最後に「なるほど!」とうなずけます)だし、登場人物が語るちょとしたセリフも絶妙。例えば「浴衣はその人の本質を引き出す。」(確かに浴衣を着ると「バカボン」になってしまう人っている!)「コーヒーは勘定の外。」「初めて入るバーの匂い。」などそれはもう絶妙で、この作者でなければ書ききれない世界観となる。
デビュー作以来、永い間、いつも楽しませていただいており、今後ともぜひ、「フィクションとしての作者」が描く小説らしい小説をいつまでも読ませていただきたい。