これまで複雑な権利関係があったことで、約二十五年前のリバイバル上映以来、長らくどんな形での上映も、ソフト化も不可能だった、木下恵介監督が手掛けたカラー・スコープサイズの畢生の傑作「楢山節考」が含まれています。この作品では、老母に扮した田中絹代が自身の歯を自分で折ってまで役作りに挑んだという鬼気迫る役者魂の演技陣を始めとして、当時としては空前の予算が投じられたと言われる贅を凝らしたセットや美術などで、日本映画の常識を超えた作品と言われました。敢えて人工的に作り出された幻想空間の造形では、歌舞伎や浄瑠璃などの要素を採り入れたり、音楽にも能楽、民謡など、ありとあらゆる日本の伝統芸能・文化の粋をどん欲に、これでもかと言わんばかり詰め込んでいて、その絵作りの執念にまず引き込まれます。それもこれも、この映画では、クライマックスの姥捨てシーンを盛り上げるためのお膳立てとして使われているのです。そしてそのクライマックスこそは、もうほとんど嗚咽で画面を追うことすらできないほど、心が揺さぶられる体験を、老若男女を問わず、あらゆる層の人が得られることになるでしょう。個人的にはこれこそ、日本映画の最高峰と呼ぶに相応しい映画だと思っています。一度はこの感情のスペクタクルを経験してみてはいかがでしょうか。なおこのBOXには木下恵介監督の絶頂期の大作がセットになっており、この価格でも決して損はしない価値があると思います。