驚かされるのは「木は生育の方位のままに使え」「堂塔の木組みは寸法で組まず木の癖で組め」といった、法隆寺大工に代々伝わる「口伝(くでん)」を根幹に据えた西岡の語りが、自然や文化、教育論にまで及ぶ点だ。技能のみならず、古き日本人の生き方をも継承してきた者の言葉は、現代人の心に、時を越えて染み入ってくるものばかりだ。
また本書は、西岡のたったひとりの弟子・小川三夫が技能を受け継いだ側の視点から語り下ろす「地」の篇と、小川が興した工人集団「鵤工舎(いかるがこうしゃ)」に集う若者たちへのインタビューを収録した「人」の篇との3部作となっている。1300年間培われてきた技が、現代においていかにして継承されていくかを捉えたドキュメントになっている点も秀逸だ。
なお、西岡が実際に法隆寺を案内しながら、豊富な写真とともにその建築の特徴を語る『木に学べ』や、法隆寺建築の過程を絵解きでわかりやすく解説した『法隆寺 世界最古の木造建築』などの著作もある。(中島正敏) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
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「百論をひとつに止めるの器量なき者は慎み恐れて匠長の座を去れ」
など現代でも通用する"仕事論"としても1級の知恵がある。
法隆寺が何故、釘を1本も使わずに1300年持っているのか。
木を生かす、とは何なのか。
仕事論、教育論、組織論、身体論、それらの"いのち"や"こころ"が語られている。
この本にかかれている内容は,当然ながら宮大工のことで,著者自身も「宮大工しかやってきていないから」と言ってます。しかし,その匠の職を通して,著者の言葉は現代の学校教育,家庭教育にまで通じる「教育の黄金律」をあらわしています。
また,職人であるがゆえに,技術者一般のこころ構えにも触れられています。今の社会において,ほんの少しの経験を「蓄積された経験」であるかのように振舞う人たちや,「長年の経験」を軽視する人たちが読んで欲しい,いえ読まなくてはならない本です。
真摯にその道一筋で生きてきた匠の重い言葉の数々を存分に味わって欲しい一冊です。