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朝日新聞の中国侵略
 
 

朝日新聞の中国侵略 [単行本]

山本 武利
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

昭和十四年元旦、日本人居留民が激増する中国の上海に日本語新聞が創刊された。その名は「大陸新報」。題字は朝日の緒方竹虎が筆を執り、近衛首相、板垣陸相の祝辞が並ぶ立派な新聞である。この「大陸新報」こそが、帝国陸軍や満州浪人と手を結び、中国新聞市場支配をもくろんだ朝日新聞社の大いなる野望の結晶だった。「正義と良心の朝日新聞」がひた隠す歴史上の汚点を、メディア史研究の第一人者が、半世紀近い真摯な朝日研究の総決算として、あえて世に問う。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

山本 武利
1940年、愛媛県生まれ、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。現在早稲田大学政治経済学術院教授。早稲田大学20世紀メディア研究所所長。一橋大学名誉教授。マスコミ史、情報史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 283ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2011/02)
  • ISBN-10: 4163737308
  • ISBN-13: 978-4163737300
  • 発売日: 2011/02
  • 商品の寸法: 19 x 14 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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By Rob Jameson トップ1000レビュアー
ジャーナリズム研究の泰斗である早稲田大学20世紀メディア研究所所長の著者が半世紀にわたる朝日新聞研究の総決算として上梓したのが本書である。

著者の斯界デビューは『新聞に見る政治広告の歴史』1972年朝日新聞社刊であり、以後同社研究を基礎に新聞史研究を重ね『広告の社会史』により1985年度日本出版学会賞、日本広告学会賞を受賞するなどの成果を挙げた。ところが編集部関係の資料は秘匿しアクセスさせない、社主の村山家批判を許さない、“朝日人”という群意識などの問題により、それ以上の研究を阻害されるに至った。そこで著者は迂回して資料を収集し始め、アメリカ国立公文書館資料、占領期検閲資料、中国に残された資料などを探索し、さらに東洋大学千葉文庫(元朝日記者・取締役の蔵書)に収められた関係文書、古書店から入手した非公開社内資料を読み込み(以上山本武利早稲田大学最終講義を聴講して要約)、朝日が「抉り出すことを躊躇し、わずかに触れるだけでやり過ごせると考えた<戦争責任>の問題」(p.8)を正面から取り上げたものである。

戦前の昭和14年1月1日創刊の日本語新聞「大陸新報」(姉妹紙に華字紙「新申報」)発行に朝日がどのように主導的に関わったのか。この話を持ち込んだのが当時の軍幹部たち(陸軍報道部長の馬淵逸雄、上海における諜報機関長影佐禎昭)と組んだ満州浪人福家俊一、受けたのが主筆の緒方竹虎と編集局長美土路昌一という構図になる。以後関係した人脈は魔都上海にふさわしい魑魅魍魎である。甘粕正彦や辻政信や児玉誉士夫のような著名人から、後に政界にでる石井光次郎、橋本登美三郎、福田赳夫、戸叶武・里子夫妻、左翼系学者の高橋正雄、美濃部亮吉、その都知事時代の秘書小森武、評論家桐島洋子の父・桐島龍太郎などなど。(なお現自民党総裁の谷垣禎一氏は前述の影佐禎昭の外孫であるそうだ)。

「マスゴミ」という揶揄に対し、過去の問題を反省し、自らの責任から逃げず、責任ある立場を明らかにして、朝日新聞のさらなる情報公開を期待するものである。
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=以下は、有料メールマガジン「メディアウオッチ100」に投稿した原稿です。=

●32号【一冊の本】 2011年5月18日

 友人の紹介で手に取った。人名索引10頁を含んで283頁。ずっしりと詰まった内容で、一度では理解しがたく、結果的に二度読んだ。知的な刺激に満ちている。益田豊彦の名が一ヶ所出てくる。豊彦の実家は私の生家の隣家なのでひそかに関心を寄せている人物だ。

 帯には「侵略か、それとも進出か」とあるが、著者自身が「朝日の中国侵略の意図」(197頁)、「大陸全土への進出計画」(198頁)と書いているのだから、侵略・進出という用語の違いは問題ではない。むしろ「ホワイト・プロパガンダかブラック・プロパガンダかの差異」、そして「ブラックの方が質(たち)が悪い」(245頁)というところに著者の力点がある。

 本書は昭和14年元旦に上海で創刊され、終戦を経て10月に廃刊されることになる「大陸新報」についての、『朝日新聞社史』の欠落を追及する。「大陸新報」の背後にあった朝日と軍部の結託。朝日はその姿を表面に現さない。著者が「ブラック」と言う所以だ。

 「あとがき」にあるように、「四十五年にわたって蓄積したジャーナリズム文献、資料群」、「新聞メディア史研究の一つの総決算」であり、門外漢の筆者の知識の及ぶところではない。主要参考文献は膨大な数で、本文中の引用を見ても、よくここまで目を通したものだ、いやそもそもこういう文献に出会うことができたものだと驚くばかりである。マイクロフィルムで新聞を読む労苦だけでも並大抵ではなかろう。文中所々に引用、参照するそのしかたも、文献を読み込んで必要な個所個所に適確に割りふられているので、一書を組み立てる上での構想力、構成力、とぎれない集中力には感嘆せざるを得なかった。

 「大陸新報」の値上げを朝日の重役会が審議している事実(191頁)は、著者が言う「朝日の都合に従う子会社」であることを確かに証明している。朝日新聞から転じた大陸新報理事長尾坂与市が中国新聞協会の筆頭理事となったことは、「朝日の中国侵略の意図を示すもの」(197頁)だと言う。「動かぬ証拠」(193頁)によって導かれた結論だ。そしてその尾坂も、著者によると「朝日の中国への野望に潰された犠牲者」(228頁)なのだった。

 ただ、朝日新聞満州総局の敷地の広大さから、「(建物・社宅の)残りの広い敷地は印刷工場として予定していたのではあるまいか」、「『満州朝日新聞』の本社・工場として先行的な投資を行ったのであろう」(202頁)とたたみかけるところは推測に推測を重ねている観があり、他での緻密な論証と比べ違和感があった(ただし134頁以下が下敷きヵ)。

 私個人の関心に引きつけて言えば、「『社史』は朝日や緒方が汪(兆銘)工作に反対であったと記しているが、神尾(茂)派遣からしてそれは疑問である」(149頁、「九 緒方竹虎と影佐禎昭」の章)という一文は、神尾の役割をさらに考えてみたいところだ。
 なお「無学歴」(208頁)と「比較的高い正規の学歴」(209頁)というある種の価値観を含む対比は、それが事実としても、無前提に言われると私には気になる表現だった。

 瑕瑾になるが文春をもってしても誤植は免れがたい。記案→起案(40頁)、『大陸新報』出す→「を」脱ヵ(47頁)、一買→一貫(199頁)、圧っした→「っ」衍ヵ(249頁)、行ったた→「た」衍(250頁)。他に75頁表2の出典表記「1933年」は「43年」の誤りかと思われる。ただし、以上は私の不勉強を認めた上でのことである。

遙かなる昭和―父・緒方竹虎と私
評伝 緒方竹虎―激動の昭和を生きた保守政治家 (岩波現代文庫)
日中戦争と汪兆銘 (歴史文化ライブラリー)
人われを漢奸と呼ぶ―汪兆銘伝
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