有元葉子の料理センスも暮らしへのセンスもすきで、だいたいの本は買っている。氏のレシピで料理していると、
どこか気分がアガる。リッチなのに、奢侈ではない。シンプルだけど、薄っぺらくない。それで、なにか、氏の
生活で学ぶところがあればと、本書を購入したが、ざっとみて、娘さんたちのエピソードは、やはり、誰もが母親に
対するものと同じで、なんとも凡庸に堕しているのは残念ではあるが、ある意味当然なのかもしれない。
よけいなことかもしれないが、本書を見ていると、有元氏が、経済的にかなり恵まれた結婚生活をしていた
ことがわかる。しかし、夫に対する言葉はひとつも見つからず(過去の生活を語った、ほかのあらゆる氏の著書同様)、娘さんの一人が、「父が……」と、ほんの少し
述べているにすぎない。たとえ離婚されているにしても、ここまで、完璧に消去してしまっている「家族」は、やはり不自然である
(そこには離婚の「り」の字すら存在していない)。それならば、「家族」とか、「うちでは……」とか、「子供たちが小さい頃は……」
などと言わないことである。料理にかぎらず、ものごとに対してすばらしい才能がある人だと思うので、どこか痛ましさも滲み出る。
よって、本書のような本はなんの役にも立たず、読者には不必要である。