あくまでフェアな本格ミステリであり、良い意味で、全ての答えを登場人物たちより先に解明してしまうことが可能である(「こいつが怪しい」「たぶんこうではないか」程度ではなく)。綾辻行人の原案の、完成度の高さ。それプラス、佐々木倫子が“遊ぶ”テツネタが、巧みに、基本的にはミスディレクションでありながらなおかつ作品世界のロジックを説明している。
いわゆる綾辻行人らしさは、一見、折り返し地点でのどんでん返しと、終盤における非合理の合理的解決くらいにしか見出されない。しかし、ややライトな描き方ながら、パズル的に二転、三転する動機の問題も、そして何より、プロットの緻密さも、本当はやはりさすがの綾辻ワールドなのである。読みこめば読みこむほど、これほど破綻なく、周到に伏線の張り巡らされた作品は、なかなかないことが分かる。様々な細部にわたり、「なぜここはこうなっているのだろう?」と考えると、多くの設定が、実はストーリーがかく展開することになった理由に該当したりするのである。
「意外な犯人」、「意外な真相」が、如何に本当に「意外」であるのかを感じとるためにも、パズルを論理的に詰めて解き明かしてしまおうという姿勢で、通常のマンガよりもじっくりと読むようにすることをお勧めする。大したことない、と思った人は、「答え」が早く知りたくて、どこかを読み飛ばしてしまっているのである。