シリアスな絵柄のキャラに、ちぐはぐな言動をさせる
ことで、オフビートな味わいを醸しだす佐々木倫子と、
ゴシック的な道具立てを用いて、非日常の空間を創り出し、
その世界観に裏打ちされたトリックを仕組むことで、読者を
欺瞞していく綾辻行人――。
以上のように、作風がまったく異なる人気作家のコラボには、
賛否両論さまざまあるでしょうが、企画自体が一種のお祭り
なのですから、野暮は言わず、素直に楽しみたいものです。
さて、以下は本作のミステリ部分について、少し言及してみます。
本作は鉄道ミステリという触れ込みだったのですが、それを巧みに利用することで、
じつに綾辻行人らしい、作品の世界観をひっくり返すトリックが仕組まれています。
(ヒロインが電車に乗ったことがないという設定も、このトリックを成立させるため)
また、犯人を容疑者圏外に逃がすテクニックにも、綾辻行人お得意の手筋が
認められるのですが、そのための伏線も抜かりなく、フェアに張られています。
ヒロインや他の登場人物が身につけていた腕時計の描写、そして時折挿入される、
ヒロインに親の死が告げられた際の情景(ドアを開ける手)のフラッシュバック――。
奇矯なテツヲタの描写や、彼らが繰り広げるドタバタ劇の合間に、視覚情報を
伝達できる漫画というメディア特有の手がかりが巧妙に提示されているのです。
▽付記
いかにも綾辻キャラっぽい“薄幸の美少女”を描くにあたり、
佐々木さんは、ずいぶんテレているように感じましたw