まず、画力が素晴らしい。並大抵の漫画家には描けない綺麗な絵でいっぱい。
次に、設定も優れている。「列車に乗ったことがない」女子高生を主役に据え、そのまわりに鉄道マニアたちをばらつかせるあたり、お見事。
ですが…これは私の個人的嗜好なのかもしれませんが、「この漫画(上下巻含め)にはバカが出てこない」ことにはおおいに不満でした。
佐々木先生の漫画は全て読んでいます。その中で我々に笑いをもたらしてくれるのは、「愛すべきバカ」に「振り回されるカワイソウな有能スタッフ」と相場が決まっていました。
たとえば…『忘却シリーズ』では「勝久くん」、『ペパミント・スパイ』においては「ドナルドくん」、『美人姉妹シリーズ』では、「雁子さん、鴫子さん」、『動物のお医者さん』にあたっては「二階堂くん」、『おたんこナース』では「似鳥さん」、『ヘブン?』では「河合くん」…そして最新作『チャンネルはそのまま!』においては雪丸花子さんでしょう…が、この「月館」、バカらしきバカが出てこないのです。「ミステリ」だから仕方ないじゃん、という野次が飛んできそうですが、断言します。「愛すべきバカ」いてこその佐々木コメディなのです。「原作者が原作者だからしかたないよ」といわれればそれまでですが。
バカバカ書いてすいませんが、この点、どうしても不満だったので書かせていただきました。佐々木先生は『チャンネル』刊行にあたり「久しぶりにバカを描きました」とおっしゃっていましたが、あなたの素晴らしい漫画には「バカが出てこなかった例」などないのです。佐々木女史がどうお考えなのかは知りませんが。
とまあ、不平不満を並べてしまいましたが、本書は冒頭にも書いたとおり優れています。一定の水準はクリアしています。ただ、私にはやや不満の残る箇所があってこのような愚痴を書かせてもらいました。