T・S・エリオットが
「最初の、最大にして最良の推理小説」と
絶賛したとされる本書。
−−といっても、
そもそもT・S・エリオットって誰?
という方が多いのではないかと思われます。
何しろ本書が執筆されたのは、1868年。
140年余りも前のことですから、
T・S・エリオットだって随分昔の人です。
ましてや本書だって、
現代の小説を読むように接するのは無理というもの。
でも、本書は推理小説−−それも、長い長い推理小説として
とても有名な小説であり、
読んだことはなくとも、題名だけは知っているという方が
かなりいらっしゃるのではないかと思います。
かくいう私もそうしたうちの一人でしたが、
このたび意を決して本書を購入し、読破しました。
インドの秘宝<月長石>が
ヴェリンダー家というイギリス上流階級の家から
忽然と姿を消し、
その行方を追っていくという物語ですが、
複数の関係者が交代で手記や日記などで
事件の顛末を証言していくという形式を取っています。
読んでみて思ったのですが、
文章は意外と読みやすく、
登場人物が個性豊かに描き分けられていて、
当時の上流階級社会を垣間見ることができます。
ただ、推理小説として見た場合はどうかというと、
あまり期待しない方がよいかもしれません。
宝石の盗難という事件は扱っていますが、
現代の私たちの目から見ると、
ミステリ的要素は薄いといえましょう。
本書は秘宝を巡る大河小説として
読むと良いのではないでしょうか。
現代の小説と違い、ゆったりとした物語展開ですので、
それに合わせて腰を据えて
じっくりと読書の時間を楽しむのに
適しているのではないかと思います。