日本ファンタジーノベル大賞の大賞受賞作である。
一気に読んだ。
この賞の受賞作は読むのに苦労する作品が結構ある。
良く言えば枠にとらわれることがない、悪く言えば一般受けしないマニアックな作品が多いからだ。
ごく普通の読書人にはちょっとハードルが高い。相当の読書家でないと作品の面白さがわからないことがある。
が、この作品は一気に読めた。
けれんのない、物語性の豊かな作品である。
舞台は200年前の奄美大島。そこに現代の奄美の海上を漂う少女と鷲の語りが交わる。
琉球は歴史の授業に出てきても、奄美については習ったことがない。
こんな過酷な歴史があったのだ。
その時代に生きた兄妹の愛。
理不尽な世の中を生きる人々の生。
人の弱さ、狡さ、悲しみを見事に描いている。
物語の最後で語られる言葉は、そこまで読み進んできた者の胸に深く刺さる。
「おまえも一粒の椎だ」
この本を手に取り、この言葉の意味をぜひ知って貰いたい。
この言葉を必要としている人が、現代にも多くいるはずだ。
読書の喜びを存分に味わわせてくれる物語だと思う。