絶望のないところにほんとうの優しさはない、と言ったのは、灰谷健次郎だったか。小林真人の音を聞いていると、そのことを思い出す。闇があるから光が生まれる。哀しみがあるから喜びがある。そんな人生の両極は、実は自然の摂理そのものなのだろう。一瞬たりとも同じ色を見せない夕暮れの空、指の間からこぼれおちるのが惜しいほど美しい森の木漏れ日、はらはらと散っていく桜の花びら、他のどんな光にもまねができない月あかりに照らされる大地・・ どれもこれも人間たちの力をはるか凌駕する大いなる存在であり、すべてが「一瞬」というはかなさを持つ。そんな大いなるもの、はかない一瞬、と対峙することで見えてくるのが自分という存在の不思議さ。そして自らの中に宇宙を見つける。
このアルバムは、小林真人が音楽を目指してからずっと見つめ続けてきた自らの宇宙が全部つまっている。それは小林真人にしか実現できない音でありながら、こんなにも人々の心を打つ。大いなるものも、はかないものも、いつも哀しみを抱えている。けれどもその哀しみをさらに包む優しさというのが、きっとこの宇宙にはある。この音楽は、そうやって再び人々を希望の光へと導いてくれるに違いない。