モーグ・シンセサイザーの可能性をリスナーに届けた冨田勲のデビュー・アルバムにあたります。1974年の発売当時、この「未来」の機械で創る音楽に対して賛否両論が巻き起こりました。今では全く議論の余地のない評価ですが、当時はシンセサイザーに対するある種の偏見があったのも事実です。多チャンネル・テープレコーダーでの録音もまた昭和という時代を感じさせます。
冨田勲が素晴らしい作曲家として活躍し、多くの作品を残していたからこそ、シンセサイザーの可能性を探るためにドビュッシーをテーマに選んだのでしょう。この色彩感覚に溢れる印象派の代表とも言えるピアノ曲をオーケストレーションのように扱い、従来の既存の楽器の概念を超えたシンセサイザーの音色で彩ることで、未来の音楽の姿を見せられた思いがしました。
ドビュッシーの原曲のピアノ曲も素敵ですが、オリジナル曲の良さを最大限にいかしてここに新しい音楽が提示されています。冨田勲の創る音楽世界観がしっかりと構築されているからこそ、世界中のリスナーに支持される音楽が創り得たわけでしょう。最初にアメリカのRCAが着目したという逸話から、その斬新性と普遍性が感じられます。
「夢」「月の光」「アラベスク第1番」「亜麻色の髪の乙女」など大好きな曲が素敵なドレスに衣装替えをして登場した思いがしたものです。
名映画評論家であり、オーディオ評論家の故荻昌弘氏の解説を懐かしい思いで再読しています。素晴らしい音楽は時代を超えて生き続けていくという見本のようなアルバムでしょう。