今回の作品には木原さんの持ち味の一つである「痛さ」はあまりありません。
かと言ってDon't worry mamaや脱がない男シリーズのようなコメディ作品ともまた毛色が違います。
読んだ後じんわりと心が温まる、そんなお話です。
ヤクザが出てくるので、暴力的なシーンは所々にありますが、
基本的に主人公二人はとても純粋で可愛らしい人たちです。
木原作品によく登場する、粘着質で嫌な奴はこの作品の主要人物の中にはいません。
チンピラヤクザの山田は臆病な人ですが、ここぞという場面ではボロボロになりながらも
大切な人を必死に守ろうとします。
そしていじめられっ子だったチ○彦、もとい路彦も下巻では山田を守れるまでに逞しく成長するので、
下克上好きな方は必見です。
また個人的にとても良かったと思うのは、兄弟のようだった山田と路彦の関係が時の経過とともに
徐々に恋人のそれに変化していく様子が違和感なく自然に受け入れられたという点です。
この辺りのリアルな描写はさすがだと思います。
梨とりこ先生のイラストも物語の世界観にとても合っていました。
薔薇色の人生のようなやさしい木原作品が好きな人は、この作品も楽しめるのではないでしょうか。
最後に。惣一と嘉藤のその後が気になります。