このアルバムを聴いて、僕は本当に久しぶりにレコード棚から
「VISITORS」を引っ張り出してきてターンテーブルに載せた。
1984年、大学1年のときに買ったLP。交互に聴き比べると、
当時感動したエッセンスの多くが
―あの目の前に突然新しい地平線が開けたような衝撃を伴う快感や、声のパワー―
すでに失われているように感じて、
時の残酷さに一瞬耳をふさぎたくなった。
でも。
「月と専制君主」の一曲一曲に耳を傾けていると、少しずつ身体が揺れてくる。
このカンジ、何年ぶりだろうな?
10代のときのようにはいかない。僕の身体と心だって相当くたびれているのだ。
でもそれは僕を励まそうとしてくれているように感じる。
あるいは暖めてくれようとしているように感じる。
−Beat goes on−
「これが今の僕のロックなんだ」
どこか遠くから、でもはっきりと佐野さんの声が聞こえた気がした。
回想。
2011年、奇跡が続いている。
某日『別冊カドカワ 総力特集佐野元春』を購入。
てっきりベスト盤かと思ってスルーしていた新作(月と専制君主)が
そうではないらしいこと、さらにアナログ盤もあることを知って仰天する。
僕は、新しい年のはじまりに人生2台目となるレコードプレーヤーを買っていた。
ガラスのターンテーブル、売り切れでメーカーにも在庫がなかったのを
営業の方に無理をいって探し出してもらった。それが今、自宅にあるのだ。
迷わずLP+CDのパッケージを予約。
(いや本当は迷った。他の方も書いていたけどLP+DVDという
選択肢もあってほしかった)
ところで最後にレコードで「新譜」を買ったのはいつだっけ?
たしかスティングの「Nothing Like The Sun」(1987)だ。
某日深夜、コンビニ留めにしていた商品を受け取り、
自宅に帰ってルンルンで開けると一枚の紙片がひらりと足元に落下。
「アニバーサリーツアー・ファイナル先行予約受付のご案内」
受付最終は今日の午後11時30分…時計を見ると11時28分、えええー!!!
震える手で携帯を押す、つながった、自動音声に従い操作、操作…
何を考える余裕もなく予約をしてしまった。
紙片を見るまでは行こうかどうか迷っていたのに。
はじめて佐野さんのライブに足を運んだとき、高校生だった。
1982年、秋田文化会館でのWelcome to the HEARTLAND TOUR
そして『別冊カドカワ』のファンからの声の欄には、
あの日あの時、同じ会場にいた一人のファンの声が載っていた…。
2011年3月12日、僕は人生で2度目となる彼のライブに行く。29年ぶりに。
なんだかずいぶん遠回りをしてしまった気もするけれど、
僕の周りに奇跡をもたらしつづけてくれている
佐野さんの新しいLP「月と専制君主」を心に抱きしめて。
Can you hear my heart beat ?