レタッチの内容自体は、フォトショップが使える人であればすぐに理解出来る内容になっているし、手順が丁寧なので分かりやすい。
自分で撮った似たような写真を使ってレタッチのトレースは出来ると思った。それで買ったつもりだったのだが、、、
しかし、この作者が伝えたがっていることは恐らくレタッチ内容などの紹介ではなく、建築に関する知識とそのメディアである建築写真の質の向上について専門家だけでなく、広く一般の人にも伝えたい、という所なのではないか?と思った。これはなかなか難しい所を狙ってきていると思った。建築系の雑誌やメディアが時に難解で、無意識的にも意識的にも自意識過剰な表現が多い中、のほほんとサラリとただ美しいもの、分かりやすいもの、そのような建築にまつわる雰囲気を「普通に」紹介する、というのは結構勇気がいる、と思うからだ。
岩窟ホール(渋い選択!)・広島平和記念資料館・森山邸(これが実に素晴らしいカットだった)・大倉山の集合住宅・岩国徴古館・宮晶子の住宅等々、非常に作例の幅が広く、選定の意図を明確に感じる内容になっている。特に後半の沖縄の普通の町中の夜景は、沖縄特有の湿気感みたいなものを「さらりと」伝える素晴らしいカットだった。
全て、この本のための撮り下ろしだとしたら、作者や編集の人が関わった労力は相当なものだろう。
こういった立ち位置で仕事をしている建築家、写真家は稀有だと思った。後半の沖縄の湿気感のある夜景や、大倉山の集合住宅のライブな写真を見て、筆者の他の写真も見たいと思った。
学生や建築を設計している人からすると、作例だけでも、「買い」だろう。おもいがけず、お得な本だった。