全編にわたり、著者の設計した実作事例の平面図と写真によって住宅の「間取り」の考え方を整理した『図鑑』…というより、平面的な「間取り図」によって生まれてしまう空間の細切れ感をいかに破って住宅の中に快適な回遊性や雰囲気のつながり、自然な生活機能の関連付けができるか、ということについてのアイデア集と呼ぶ方が適切だと思う。そういう意味では『「間取り」の図鑑』というタイトルで少し損をしている気も。特に、ポンチ絵的な間取り図で捨象されてしまう断面的な手法については、言われてみればなるほどね、と今さらながら思わされることもけっこうある。
大小の吹抜け、腰壁や小壁・独立壁、採光スリットや引戸、閉じたテラスなど、個別に見ればなんということのない手法を具体的な暮らしに引きつけて活かす具体例がたくさん出ていて、「間取り」で煮詰まったときに目を通すと何かしら手がかりになると思う。いわゆる「間取り」に関しては、家事スペースやウォークインクロゼット、書斎コーナーなど、サブ的なスペースをどう配置していくかについて多くの事例が掲載されているのが参考になった。
狭小や複数世帯の事例もしっかり入っているので、そのあたりの参考にもなる。また、いちおうプロ向けの内容ではあるものの、決して専門用語全開というわけではなく、図面も手描き風で顧客向けのプレゼンボードのような趣きなので、一歩進んでこれから建てる/改修する家の「間取り」を考えてみたい一般の人にも参考になる一冊だと思う。ざっくりしたワンルームはやりすぎだけどあんまり部屋ががっつり分かれているのも何かなあ…という方にはおすすめです。