林真理子の直木賞受賞作。
当時の世相や流行が垣間見えて面白いな〜なんて思いつつ、
書かれている文面は決して甘くない^^;さすがの貫録を感じた。
タイトルの「最終便に間に合えば」
金の切れ目が縁の切れ目とは、本当によく言ったもんで…^^;
今のご時世、カップルはワリカンが当たり前!みたいだけれど、
あの頃は明らかに違ってた。男が払うのが普通だったと思う。
まして、だ。好きな女に一銭も払わぬ男なんているんだろうか。
明らかにヒモ、金と身体だけが目当ての女にされている主人公、
しかし本人がそのヒモを離さないんだから^^;これは仕方がない。
夜中に逃げ込んだ友人のアドバイスは、まさに読者の代弁論。
こんなに酷くて切ない話なのに、なんだかおかしくて情けない。
それは、明らかに主人公が上手に立って、過去の男を翻弄する、
「今」の姿が炎々朗々と描かれていることに尽きる。恐るべし女!
でも最終便に間に合わなかったら、またあのタクシーで延々と
お触り合戦し合ったんだろうか^^;運転手さんが、お気の毒だ〜。
「エンジェルのペン」
これは作家ならでは、だからこうなるのだ、的で面白怖い感覚。
実際に起きたことしか書けないという新進作家と、その餌食(爆)
となるモデル被害者。どうオブラートに包んでも本人には分かる。
これはフィクションなのよ、と言ったところで恨まれるだろうな^^;
でも何を題材にするかはおそらく本人の脳裏に常にあるはずだ。
それを思い切って書いてしまうかどうか、面白くなる方を選ぶか、
無難に妄想主体で仕上げておくか。林真理子ご本人は、どっち??
作家ってこういう仕事だから…というため息が聞こえてきそうな話。
「てるてる坊主」
これは当事者だったら笑うに笑えない心底おっかな〜い話だった^^;
とはいえ、薄毛→禿げは白髪と共に年齢を重ねれば仕方ない事実。
涙ぐましいのは、それをどう隠すか、増やすか、になってしまうから…
多分林真理子ご本人もそうなのだろうが、この感覚、女には謎だ。
昔から不思議なのは、ガイジンは禿げでも十分モテるというのに、
日本人は禿げ、というだけで毛嫌いされる(この漢字酷い字並びだ)
この不思議…だからきっと、日本の男性は懸命に隠すんじゃないか。
モテたい一心で。という下りが独身でも既婚者でもアリアリと出て
一層黒髪を所望する結果になっていることを嘲笑うかのような一編。
夫の初めての挫折がコレ。それって幸福なのか?不幸なのか…??
「ワイン」
海外旅行先でつい、高価なお土産を買ってしまう人間の習性をまた、
こんなに面白くて怖い一編に仕上げてしまうのかと膝を敲いた一編。
自分で飲むのも、そこいらの他人にあげるのも口惜しい、これはもう
自分がこの人ぞ!と思う人間に進呈するのだと持って行ったところが、
時節の品と勘違いされる可能性におののき、逃げ帰ってくる主人公^^;
行き場のないワインと、行き場のなくなった女との比喩も絶妙で笑える。
「京都まで」
冒頭の一編と真逆の立場でありながら、主人公が味わう苦味の質が
同じなんだよな〜と感じさせるところが切なくて怖い。
年下の彼氏に夢中になり、京都での逢瀬が楽しみで仕方ない主人公。
いっそ彼の元へ飛び込んでしまおうという、思いきった言動が相手を
震え上がらせ(爆)自ら退散を余儀なくされる…という^^;情けない女の
一部始終を赤裸々に描いてしまった、一編。
ここで登場する女友達(またか^^;)の発する台詞の正確さに怖れを感じ、
傍らにいる異性を再確認したくなる?ほどの信憑性に慄いてしまうかも。
男も女もまず仲の良い同性に、相手を紹介しておくといいかもしれない。
とはいえ、愛は盲目…?そこに歳の功など存在しないことも確かである。
どれもこれも怖いくらいリアルで、自嘲しながら汗をかく短編集。