先日の逝去によって図らずも理論家として知られることになった伊良部氏と日米、そして指導者としても活躍する吉井氏が投球技術について語った本。
対話形式を中心にして、これだけは守らなければいけないという基礎の基礎に絞って説明している。彼らによると、投球の大半は軸足の膝によって決まるという。膝の皿を、踏み出す足が着地するまでプレートと平行に維持し、着地した瞬間に膝を一気に回転させること。ほとんどこれに尽きていて、他の技術書でよく見かけるような股関節やら何やらの「現代的」な理論は出てこない。
で、その膝の使い方なのだが、言葉にするとシンプルだが、これが異常に難しい。プロの一流選手は大概できているし、プロ候補と言われる高校生のほとんどはできていない。プロでも成績の残せていない人ほどできていない。それくらい難しい技術なのだ。さらに困ったことに、実践が難しいだけでなく、その感覚を伝えること自体から難しいので、繰り返すだけでなく、より図解を含めたより丁寧な説明があってよかったように思われる。いずれにせよ、究極的には、自らの体が悟るのを待つしかないようなのだ。
この「膝」が万全にできないとなると、目先の目標となるような技術の説明が欲しいところなのだが、体重移動やトレーニングの説明が少なすぎるのが、この本の最大の難点といえる。
対談形式で散りばめられた投球技術、トレーニング法、精神、野球観にわたり示唆に富んだ視点を披露していて、観戦を中心とするファンには最適、選手にとっても、読みやすいので読んで損はないし、得られるものはあるはずだが、包括的な技術書との併用が必要となるだろう。いずれにせよ、貴重な一冊とは言える。