心理療法というものには様々な技法があるが,小手先の技法に囚われることは,クライエントを技法に無理やり合わせることになりかねない。最初は,本書がそのような小手先の技についての本だと思っていたが,読んでみたら全く違っていた。著者の基本的なスタンスは,「伝統的心理学モデルをアセスメントの道具でとして用いたのち,特殊な技法を使ってエネルギーの状態を変えることによって,心身に均衡をもたらすという,二段階の構え」である。つまり,著者はあくまでも伝統的心理療法の考え方に立脚した上で,よりクライエントのためになるアプローチを探求しているわけで,これは非常に真摯な姿勢であると評価できる。
本書で紹介している技法は多岐に渡るが,著者は既にあらゆる技法を統合できるようなモデルを仮想しているようである。私は,ここにアーノルド・ミンデルのプロセスワークに近いものを感じる。クライエントに起こっていることに忠実に沿うことは,それにぴったり合った技法をそのつど選び取ることであり,本書はそのためにヒントを与えてくれるように思う。
難点はタイトルが安直であること。確かに,EMDR・催眠・イメージ法・TFTの紹介をしてはいるが,これは原題では副題に過ぎず,主題は“Finding The Energy To Heal”であり,よりふさわしい邦題が付けられるべきである。本文には多様な技法を総括するキーワードを“エネルギー療法”としている。この呼び方がふさわしいかどうかは議論の余地があるが,せめて『エネルギー療法の探求 セラピー技法の統合へ向けて』ぐらいの挑戦的なタイトルをつけても良かったのではないか。そうでないと,邦題に挙げられている各技法に興味がある読者しか獲得できないと思われる。