80年代、日本は半導体を筆頭にシリコンバレーでそこそこ成功し、その後フォロワーとして現れた台湾、インド、中国に追い越されたと、思っていました。台湾、インド、中国が、日本よりも後から北米あるいはシリコンバレーに入ってきた、と勘違いしていたのです。そう思っていた人は私以外にも多くいらっしゃるのではないでしょうか。この本はそんな勘違いを正してくれる良書です。つまり、台湾、インドは日本が80年代にシリコンバレーで成功するよりずっと前からそこに入り込み(国家的、民族的な理由があったからですが。)、ネットワークを発展させ、シリコンバレー活用の基礎を築いて来ていたのです。そして90年代以降の台湾、インド、中国のIT産業における隆盛はその基礎の上に当然の如く達成されたものであり、単純に日本が先駆けた後に、コスト力、資本力のみで日本を凌駕してきたのではありません。この認識の違いがその後の日本の拙速な対応を生みますます日本の地歩を奪って行く結果につながっているような気がしてなりません。もっと腰を落ち着けた活動が必要ということなのですが、悲しいかな台湾、インドが達成した長期に渡って影響を及ぼしうる勢力圏は、企業主導によって築かれたものでは無く、民族(あるいは個々の個人の集合)によって築かれたものなので、企業主導あるいは国家主導の傾向が強い日本にはもともとまねしずらいものなのかも知れません。これは政策や、1企業の方針ではどうしようもないことです。自然に多くの日本人が海外に目を向け、現地を活用するネットワークを築いて行けることを期待するのみです。日本自体があまりに良い国すぎて、海外に出るモチベーションが湧かないのはしょうがないとは思うのですが、今後、経済が縮小し、かつ80年代と同じ方法で競合と戦うことができない日本にとって、これからだからこそ海外ネットワークを使い倒す人材が海外と日本との間を行き来して競合と戦える環境を作って行けるようになることを期待します。例えば塩野七生が描く都市国家ベネチアや、現代のスウェーデン等の北欧諸国、あるいは韓国などが世界を相手に見据えてその国のプレゼンスを考えているように。