歴史小説に多くの優れた作品を残している津本陽がこのようなダイナミックな展開の経済小説を残していたとは知りませんでした。
1976年10月から1982年頃までの6年間が描かれており、主人公の佐久間平蔵は伝説の相場師・是川銀蔵氏をモデルにしています。是銀さんは、1982年当時の長者番付の1位になるなど大変有名になった人で、当時はマスコミに騒がれたものでした。
本書の佐久間平蔵は日本の基幹産業の資源株に目をつけ、一点に絞って安値を丹念に拾いながら買い進みます。一定のチョーチンがついてからは、信用取引でもって遮二無二買い進み、一か八かの瀬戸際に追い込まれながらも駆け引きを駆使しながら見えぬ売り方に対峙していく様は、株式投資の醍醐味を見事に表していました。
実際、是銀さんがどのような相場を張ったのか、氏の自伝を読んでいないので分かりませんが、津本陽はそれを踏まえながらもまさしく見てきたかのような描写力でこの老相場師の生き様を浮き彫りにしていました。大株主となって会社との関係を持つところも実際のところは分かりませんが、生き生きとその事情を描いていますので、株式投資に関心の薄い人も十分楽しめる経済エンターテイメント小説として成り立っていると思いました。
なお、本書の新装版の文庫は2007年5月25日の発行ですが、その前の角川文庫は1988年1月に発行され、単行本『裏に道あり 「相場師」平蔵が行く』は1983年12月に日本経済新聞社から発行されています。