三浦しをん、谷村志穂、阿川佐和子、沢村凛、柴田よしき、松尾由美、乃南アサ、角田光代。
40〜50代を中心とした女性作家さんたちの描く恋愛アンソロジーです。普段あまり読まない
作家さんばかりでしたが、いずれも作者さんの個性と魅力いっぱいで、大満足でした。
気に入った短編3つの感想を書きます。
―三浦しをん『春太の毎日』―
一人暮らしの麻子と、その飼い犬の物語。主人公の犬の語り口がコミカルで、とても温かい
気持ちにさせられました。人間には犬の言葉が分かりません。作中で犬の春太くんは、麻子と
自分は『命の速度がちがう』こと、そして『悲しみを感じるのにできることはあまりに少ない』
ことに対して自覚的に生きています。とてもリアリティがあって、胸に迫るものがありました。
―松尾由美『私は鏡』―
大学の文学部に所属する鈴木比呂と、その後輩である田村いずみの二人が中心に進むライト
ミステリーです。物語の中心は、比呂が偶然見つけた“私は鏡”という掌編小説を書いたのが
誰なのか、という点にあります。この短編は、驚愕の結末もさることながら作中の“私は鏡”
の流麗な文章に心奪われました。最後まで読み終えてから、この部分をもう一度読みたくなり
ます。
―角田光代『おかえりなさい』―
私は本アンソロジーの中でNo.1を付けます。離婚することを決意した青年が、妻が去って
行く日に語る回想形式のお話。それは二人の出会いではなく、青年が大学生の頃に出会った、
あるおばあさんとの思い出です。どこか物悲しいそのエピソードと二人の離婚。物語の終幕
その二つが静かに重なり合って、胸にじんわり残る切なさがいつまでも消えません。
これが、大人の女性が描く“最後の恋”なんだ。全て読み終えて、しみじみと考えました。
なんだか、まだ乳飲み子の私にはほんの少し、ほろ苦かったです。