あらゆる価値の価値転倒であった戦争から共同幻想、
困難な結婚の経緯から対幻想、
一人で戦うという覚語から個人幻想が抽出されたことが的確に述べられています。
文献的にも吉本が徴兵忌避をしたのではという柄谷行人、浅田彰、小熊英二の言いがかりは誤りであり、誹謗中傷のたぐいであると指摘されています。(55頁)
価値ある人間の原像+人間の等価性=大衆の原像(230頁以下)であることが、吉本さんの生活思想に密着して論証されています。
本書は、吉本隆明が構築した壮大深遠な理論体系についての研究、批評ではなくて、
生活思想を伝記的事象と著作からたどって、率直な意見と感想を述べたものです。
ですから本書は、吉本理論の解説書でも入門書でもなく、
吉本思想に「手のひらをあて」(あとがき)て書かれた共感書というべきでしょう。