2009年1月4日付日経朝刊で著者の石川直樹氏と本書が紹介されたのを見て、早速に本書を読んだ。2004年1月27日出発の熱気球太平洋横断挑戦で天の川2号に搭乗した神田道夫氏と石川直樹氏。翌1月28日に太平洋上に着水し、大時化の海を漂流しコンテナ船スターライトに奇跡的に救助された。また2008年1月31日に神田道夫氏が非常に大型のスターライト号に搭乗し再挑戦の熱気球単独太平洋横断に、しかし翌2月1日に日付変更線を越えたところでぷっつりと消息を絶った。これらの冒険を中心に経験者の石川氏が事実の記録と冒険者魂と神田道夫氏の生き様をvividに語りかけてくれる。特に第1回目の太平洋横断挑戦は石川氏も同乗していたことから描写がとても緊迫感にあふれ、力強い筆致が印象的である。
一方で、リベンジであるべく神田氏の第2回目の太平洋横断挑戦については、いろいろと考えさせられる。まず悪天候で、非常に天気が不安定な海域であったこと。同時期にガス気球で横断を狙っていたアメリカ人冒険家には専属の気象チームがいて、求めている風や気象にならない為に佐賀からの飛行を断念していること。熱気球は自然現象には逆らえない乗り物で謂わば風次第であること。ハイテク装備はなく、誰もが納得の綿密な計算や確信もなく、「運」が重要なファクターであること。「条件が全て合致」した時に成功する冒険であること。冬の海に着水すれば助からないのが当たり前の危険過ぎる冒険であること。自作の気球で、貧弱なバーナーでオートパイロットも一つにしか取り付けず、重い気球を高度8000mに維持せねばならないこと。出発から一睡も出来ない単独飛行であること。ゴンドラではなく籐のバスケットにしたこと。失敗のことなど端から頭になく、成功することしか考えていないこと。これらを石川氏から本書内で聞かされるにつけ、冒険とは何なのか・・と私は考え込んでしまう。危険なことに進んで行くことが自分のIDとしての冒険なのか。冒険の故に危険を顧みないでいいのか。冒険は自身の危機脱出にまで思いを廻らさないのか。こう考えれば私は冒険者になり得ないのは当然だ。