2006年の、怒涛とも言える島田作品刊行ラッシュのトリを飾る作品。
内容は、かつての『数字錠事件』を彷彿とさせる温か味のあるストーリーを基本軸に、最近の傾向として顕著な、社会問題(今回は司法の硬直性と消費者金融問題)を盛り込んでいる。
社会問題を扱っていても、そこは「神の如き名探偵」御手洗のいる世界。松本清張や宮部みゆき的な冷徹なルポタージュのようなリアリズムは無く、世界観はあくまでもフィクショナルである。
無論その虚構性は否定的な意味ではない。この現代の日本において、御手洗のような「不器用でぶっきらぼうな優しさ」は、寧ろ虚構の中でリアリティを持ち、そしてマスの中に埋もれる普通の人々の悪意とその狭間に落ち込みもがき苦しむ人々の群はまさしく現実である。この対比が逆説的に現代日本の病理を抉り出しているのかもしれない。
一連の御手洗シリーズの流れで言えば、この作品は比較的軽めだが、後にインターバル的な役割を大きく果たすのかもしれない。けれど御手洗と石岡。この二人のやり取りが前半1/3部分のみというのもファンとしては少し寂しい。そんな理由で☆一つ減らしました。