SF4編が収録されている。表題以外の作品はクスッと笑ってしまうものばかりだった。女性の月経に焦点をあてた「女王様でも」。タイムトラベルものと思いきや、抑圧された男女の不倫願望に火をつける実験を扱った「タイムアウト」。ひょうきんなエイリアンを狭いアパートに引き受けてしまった女性の悲喜こもごものラブコメディ「スパイス・ポグロム」。しかし圧倒的によかったのが表題「最後のウィネベーゴ」だ。
新型パルボウイルスで犬が絶滅したあとのアメリカが舞台。主人公のカメラマンは取材の途中で車にひき殺されたジャッカルを見かける。その光景は彼に15年前に車にはねられて死んだ愛犬を思い起こさせた。文章は現在と過去をいきつ戻りつしながら進む。
「いい人物写真を撮るコツは、大切に思っているものを語らせること」。最後のキャンピングカー、ウィネベーゴの取材で知り合った老婦人は亡くしたチワワを語るときに、それまでの仮面を一瞬だけ脱ぎ捨てた。そして彼はそのひとコマの写真の中に、確かに存在していたチワワを見た。犬は表情筋を持たないのでその本当の姿を写真に写すことは不可能であると信じている彼にとって、亡き愛犬アバヴァンの姿は写真の中にさえないのだ。
15年前にアバヴァンを車ではねた女性を探し当てて訪ねる彼。事故の原因となったのはなんなのか?なぜアバヴァンは車にはねられたのか?「もしもあのときこれがあったら、あんなことは起きなかったのに」という言葉の中に全てが集約されていて、最後に彼は懐かしいアバヴァンの本当の姿をはからずも見つけることになる。哀愁と切なさが漂う素晴らしい作品。