古くは「
落ちこぼれ軍団の奇跡」に書かれた山口良治、「
リターンマッチ」に書かれた脇浜義明。何もスポーツに限定される訳ではないのだが、ドロップアウトした少年たちと正面から向かい合い、受止めてくれる先生には本当に頭が下がる。
それにしても、ドロップアウトする生徒の変質ぶりには目を覆いたくなる。リターンマッチの脇浜は「アカンタレが本当にアカンタレになった」とケンカでは負けなかった非行少年がケンカでも負けるようになったことを嘆いていたが、ドロップアウトの原因が貧困や両親の離婚ならまだしも、強迫精神症やうつ病、ADHDといった心の病気が原因となってくると、普通の学校の先生ではほとんど対応が困難なんじゃないだろうか。
それでも野球を通じて生徒と向き合う「わせがく」の先生の苦労には本当に頭が下がる。
がしかしだ、ノンフィクションとしてのレベルは高くない。「ヤクルトの宮本とわせがくナインの差は野球が上手か上手でないかの一点しかない」「こんな野球部がセンバツの21世紀枠に選ばれることを祈りたい」と本気で思っているとしたら、ドロップアウトした少年たちの現実、彼らが負った傷や背負わされてしまったものの大きさを軽視して、わせがく野球部の今後を楽観しているとしか思えない。
野球有名校の落ちこぼれと心の病気を持った少年の融和や、心の病気を持った少年が心を開いて回復していく様子等。本当に野球が素晴らしいと思うなら、グランドで何が起こったのかもっと丹念に書くべきだ。