上下合わせると1,000頁の大長編だが、こういう小説をpage turnerと呼ぶのだろう、とにかく止めることができず、一気に読んでしまった。
主人公の桐生晴之は30代後半の新進気鋭の才能溢れる野心家の建築家で、誰もが振り向くほどの容貌さえ利用して、建築の世界で名を残そうとしている。一見嫌味な男だが、貧困の中で愛する女性を失った誰にも語れないほど辛い過去を秘めている。そんな彼の昔の恋人とそっくりな女性が目の前にあらわれたことにより、彼の前には大きなチャンスが広がると同時に、それをすべて失う危険に晒されることになる。
ストーリー展開が素晴らしく、また登場人物が何れも魅力的で、男の友情と女との愛情に気持ちが熱くなり、そして最後は涙が止まらなくなる素晴らしい作品です。
(ここからはねたばれになります)
それにしても、この結末はつらいですね。光を目指してこのように必死で生きてきた人間の運命がこのような形で閉ざされたのは残念です。木島がいずれにしても清家淳介を殺害したであろうことを考えれば、桐生の行動に実質的には犯罪となる要素が殆どなかったと思います。このまま結婚しても果たして茜を幸せにできたのかと思うと、こうなるしかないと納得する気持ちと、これではあまりに酷いという気持ちがまぜこぜになって、読み終わったあとはしばらく気持ちの整理がつかなかったです。