シリーズ物の一つなので、史実を見る目を離れて物語的にならないか不安はあったが、研究書として遺憾のないものであった。
まず注目したいのは事ある毎に曹操の詩を提示している点。これは要するに曹操が自ら残した肉声を挙げていることになるので、その意味で貴重である。
東洋史の学術文献としても申し分ないが、どちらかと言えば中国文学研究者向けの本である。
本文の結びを敢えて曹操に好意的でない『曹瞞伝(ソウマンデン)』からの引用した事は本書の味わいを深めているようにも思う。
あとがきは少々、情緒的な文章であるから、戸惑いも覚えるが許容の範囲であろう。