橋爪大三郎の20年にわたる書評の集大成である。
著者が取り上げた本をざっと見るだけでも彼の幅の広さ、懐の深さがよくわかる。
小林よしのりから浅田彰まで、椎名誠からウォーラーステインまで。どの書評も真剣だ。批判も厭わない。
自身の存在と思考のすべてを注いで、一冊の本と向き合っているのが感じられて、心が動かされる。
仲間内の本を誉めあうだけの、ありがちな馴れ合い書評とは格が違うと言っていいだろう。
各書評の初出紙(誌)を見るのも面白い。産経新聞にフェミニズムの本を書評したり、
朝日新聞で「つくる会」の本を紹介したりしているのは彼の生真面目さゆえなのか、茶目っ気なのか。
このあたりも橋爪氏の魅力であろう。
ひとつだけ苦言を言えば、取り上げられる本があまりにも「極論」に満ちたものやミーハーな本が多いということだ。
たとえば氏は、朝日新聞で『脳内革命』の書評を書き、「コメントのしようもない珍説」「本書は、オウムと同様の
危険な一線を超えつつある」などと書いているのだが、橋爪氏ほどの知性がこの類のトンデモ本に(たとえ批判的にせよ)
言及すること自体が労力の無駄であり、いらぬ勘繰りをされるのではと心配してしまう。
彼の利点でもあり欠点でもある過剰な「真面目さ」がこんなところにもみえて、もどかしくもほほえましい。