2010年1月の日本学術会議のシンポジウム「世界のグーグル化とメディア文化財の公共的保全利用」を、関連刊行物をもとに一般向けにまとめたもの。副題に示されているように、「降って沸いた」グーグル問題への対応をきっかけとし、これまで日本で「知的財産の保存・活用」を考えてきた人たちが出し合った意見というところだろう。キンドルからiPad、ガラパゴスやGALAXYと、既にかまびすしい市場に直結する著作に比べれば「でおくれ」感もあるが、「あわてないでじっくり根底の問題を考えよう」という人にはかえって向いているかもしれない。
コラムで上野千鶴子さんも書いているが、グーグル問題は時代の流れに乗ってやってきて「知の共有」や「デジタル化」をせまる黒船である。しかしこの黒船は公的代表ではなく一企業であったというのでややこしくなっていると考えると問題がわかりやすくなるようだ。
著作権を扱った「第3章 書物の公共性とは何か」も、出版業の「営利」の視点とからめた話になっていて面白い。
「書物と映像」ということで、映像の保存・共有についてもかなりの頁が割かれている。ノンフィクション映画の例が挙がっているが、映像には「意図せず移っているもの」に歴史的価値があったりするなど、書物とはまた違った注意点があることなどはあまり映画に興味のない人間としては新しい視点であった。
本書では何箇所かで「グーテンベルク革命から500年」という言葉が出てくる。印刷による知の伝達・保存は一つの節目に来ていることは確かだろう。黒船にせまられた開国もなんとか乗り切った(問題は残ったかもしれないが)維新の例のように、グーグル問題がこれからの知の伝達・保存の新しい手段を考え、進めるよいきっかけになって新しい知の利用の仕方、教育の仕方を考えるきっかけともなって欲しいと思う次第である。