登録情報
|
七〇年代半ばに書店としては後発で始まった西武百貨店の「リブロ」。ぼくが初めて訪れた八八年は眩しいくらいに輝いてました。地方から出てきたもので、タイトルは知ってたけど県庁所在地の大手チェーンにはなかなか入荷しない本が綺羅星のごとく棚に並んでた。ほんとに魅力的なお店だった。
そのリブロを演出していた人たちの物語。あるいは証言集。大書店の栄枯盛衰は「三国志/戦国」、個性的な書店人たちの「梁山泊」。まさに風雲児たちの記録です。
これは「本が好き」「発見が好き」な人へ、現役書店人からの、本の捧げ物ですね。とくに「ニューアカ」「精神世界」とかの言葉が懐かしい人、もう読むしかない。あなたの壺にヒットすることがいっぱい載ってるよ。
実のところ私にとってリブロという書店はどうにもこうにも敷居が高かった記憶ばかりがあります。東京のような「マイノリティの絶対数が多い街」でなければおよそ成立しないようなスノッブな、いえ失礼、品格の高い品揃えの書店に、足を向ける機会はそれほどなかったのです。本書の中でも「売れる本」より「売りたい本」を置くべきだと語る当時の書店員の証言が出てきて、ちょっと鼻白みます。まさにリブロは、一般大衆向けの書店というよりは、一部の「知的水準の高い読者」と「知的水準の高い書店員」とが切り結ぶ場所というイメージが強かったのです。必定、私のような大衆的読者はきっとはじかれてしまうのではないかという恐懼の念を抱いていました。
ですが本書には、こんな風にあの書店に対する思い入れがない私のような読者にとっても、興味をひく点が確かにあります。本書は消費税導入が書店業界にどういう影響を与えたのか、また日本独自の再販制度をめぐって流通業界や公取委がどういう鞘当てを演じていたのかなど、ひとりリブロに限らず、広く書籍の出版・流通をめぐる日本の動向について触れています。
また80~90年代に広く売れた書籍のタイトルが次々と登場してくるので、私にとって必ずしも読んだことがある本ばかりとはいきませんが、東京へ出てきたばかりの私にとって青い時代のあの懐かしいニオイを味わうことが出来たのも事実です。
|