最終巻。本作のような続きもので、レヴューでのネタばれはまずいので、物語の核心や、展開についての具体的な記述は避けます。しかしある程度は物語の流れに触れるので、未読の方はご注意ください。
ある程度予想はできていたラストですが、4冊分付き合ってきた気持ちのいい好漢たちが苦しむ姿は、悲痛でした。
乾隆帝−−。多くの権力者が恩知らずだというのは、デュマの「三銃士」で、王妃の忘恩の振る舞いに憤るダルタニアンの姿を通して教えられていたことですが、つくづくだなあと思いました。まあ、歴史上では清朝最盛期の皇帝ですから、けして暗君ではなかったでしょうし、民の利益になることもやった人なのですが。ナポレオン3世だってユゴーに「独裁者」と批判されましたが、全くフランスの利益に貢献しなかった訳ではありません。「三国記」の曹操だって、史実ではあれ程の悪人ではないです。この辺りは冷静に読むべきでしょうが、とりあえず本作の乾隆は憎たらしい(笑)。普遍的な「権力者」の持ついやらしさが、彼によく描き出されているように感じました。
ヒロインの最期もショックでしたが、あのまま皇帝の籠の鳥として生き地獄を味わうよりは、あの方が良かったのではないかと思います。歴史の中では実際に、彼女のように血を吐くような思いで、家族の仇に嫁いだ女性たちがいた訳で、それを思うと本当に悪辣な権力者が憎くてならなくなります。
主人公の陳総舵主は、「優柔不断」と言われて金庸作品中では人気がないそうですが(確かにハムレットみたいな所がありますね・笑)もし自分が同じ立場だったら果断にできたかというと、正直難しいと思いますので、この評価はちょっと可哀相な気がします。運命に翻弄される人間の悲哀と葛藤が出ていて、これはこれで深みがあるのではないでしょうか。
ともあれ、中国の壮大な歴史絵巻の中で、これでもかこれでもかと新たな展開や武侠の達人が繰り出される、深い教養と奔放な想像力が生み出す圧倒的にパワフルな金庸ワールド、堪能させていただきました!!漢民族、満州族だけではなくウイグルやモンゴルの人たちもバリバリ活躍する物語の懐の広さは癖になる楽しさ。ドラマもチェックしてしまう予感・・!
そして、今後、他の金庸小説も読んでいきたいです。武侠小説は15作品あり、巻数も多いので、お財布のためにもハマりすぎないように気をつけます(笑)