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たとえば、ただ酒に溺れて、女に逃げられて、博打ですって、殴り合いして傷だらけになって、「へっ、これぞまさに人生さ」という程度の内容ならそれこそ笑い話にもならないが、この人の場合はそこに競馬や、長距離トラックや、サッカーや、拳銃や、魔術系美術や、定型っぽさの欠片もない下品な詩やらが絡んでくるから、話が絶望やミジメさに終着しない。どこかいつも進行形で、希望じゃないけど明るさはあるのだ。
自殺を勧めたかと思えば、「この世が辛いからという理由で逃げるようにする自殺は最悪だ」とか、「この世がバカらしいから死ぬというような自殺はこれまたダサい」といったようなことを言い放ち、自殺は物理的にも精神的にもなに不住なく、なおかつ驚異的な頭脳を有した人間にのみ許される至高のエンターテイメントなのだと説き、トラックにひかれた片目の競馬狂の弔い合戦に競馬場に行き、片目の不住な馬に有り金はたいたりというヘンテコだけどなんか分かるような人生美学。
蔵書を全て売り払って、町へ出て遊郭と博徒の世界を乱歩して、結局文学に戻ってきた奇妙な作家の不可思議なエッセイ集。最終的に言っていることも決してそれほど非道徳的ではなく、まぁたしかに一理あるよねという感想をつい持ってしまう内容なのです。個人的には全然好きな作家のタイプではないが、ガンジガラメの文学界において、ヘンなことを言い続けた功績は評価したい。とくにハイティーンズ傑作詩集選はズバ抜けた詩集っぷりです。
ちなみにパーキングエリアでの長距離トラックの運ちゃんのちょっとした人生紹介なぞはとっても素敵でした。全体としてはそんなに高い評価ではありませんが、部分々々はかなりイケてると思いました。
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