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5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
日野氏の遺作エッセイ集,
By Confesion Del Viento (東京都文京区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 書くことの秘儀 (単行本)
「エッセイと小説を峻別している」という日野氏の、〈なぜ小説を書きたがるのか。小説を書くことが、どうしてこれほど深く楽しいのか〉という、小説家という職業人の誰しもが持つであろう根本問題を、様々な想念で綴った、遺作エッセイ集。とはいいつつ、九篇収録の内、最後の『書くことの秘儀』という作品以外、直接的には「書くこと」についての問題提起は、為されていないように思えます(ただ、どの作品も、「これぞ日野節!」というような、独自の論考は、きちんと為されていますが)。 それでも、その『書くことの秘儀』というエッセイ、これが凄かった。 マルグリット・デュラスの『愛人(ラマン)』を巡って、デュラスのインタビューなどから、日野氏の体験や思想を折り合わせ、「(小説を)書くこと」の秘密に迫っていきます。 他人のための報告書や、計算書などではなく、自分の想念・予感・物語を、自分の為に書くことで、執筆に不思議な加速力がつき、自分の内部がめくり取られ、結果として、それが小説として普遍的な声に到るのだという、「運命的に書く人=作家」であった日野氏の「書くことの秘儀」に対する畏怖と幸福の念が、同じくそういった人種であったデュラスのそれと、自然とシンクロナイズされているのをひしひしと感ずる、鳥膚の立つエッセイです。 日野啓三氏は、私的に敬愛する作家の筆頭ですが、この『書くことの秘儀』は、少なからず「小説を書きたい」という欲求ないし衝動に駆られるような人は、読んでみるべき作品であり、幾多の名作を残し、「運命的作家」であった氏の、ある意味、極点的論考が、味わえます。
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
書くことの緊張感,
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レビュー対象商品: 書くことの秘儀 (単行本)
小説を創るということは、恐ろしいことであり、畏るべきことであるという認識を大切にする作家である。のんべんだらりと書くエッセイと違い、書く途中の緊張の度合い(血圧・アドレナリンの濃度)も異なる。小説家は評論家ではないのだから、原稿に書き、実現させなければ何の意味もない。本書はそれを承知の上で、あえて小説を書くことの極限的意義を問うている。曰く「悲劇的仕事=書くこと」(マルグリット・デュラス)から発して「書くこと=秘儀」(本書著者のキーワード)とみてとることが、最も大切なことと思われる。 難解で実験的なヌーヴォーロマンを書いてきた作家も七十歳になると、少女時代のスキャンダラスな告白的私小説「愛人」を書いたことに関連しての論である。今世紀最高の50ヶ国以上の翻訳譲渡権をもつフランス文学であるが、この作品に親近感をもつのは、植民地で育った著者と共通感覚があるためらしい。植民者(コロン)の引け目・不条理を逆手にとって、愛の本性を書いていることである。 作家にとって書くことは、自分の奥にあるものを呼び起こし、意識することである。それは運命的、神秘的とまでは言えなくても、なにか「秘儀」に類することのようである。書かずにはいられないものに憑かれたように書く。生きることには様々な意味を付与することができようが、「生きるとは書くこと」である人の宿命を論じて、緊張感の漂う格調高い一書である。
12 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
時空の大きな枠組みのなかで生を位置づける試み,
By bluepasta (Brooklyn, NY USA) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 書くことの秘儀 (単行本)
1998年12月から1999年10月まで、「小説すばる」に連載されたエッセイ「小説をめぐるフーガ」を編集したもの。タイトルとなっている「書くことの秘儀」は、マルグリット・デュラスの「ラマン(愛人)」をめぐって、書くことの深刻さを論じたエッセイ。その他は、書くことについて、というよりは、我々現代人が、今地球上に存在することの意味を、宇宙の起源、人類の起源に遡って考察していくエッセイ8篇。日野氏はこの作品で、抽象性の究極の産物である文字を駆使して、抽象性の対極にある生そのもの、そして全宇宙における人間存在の意味を探っていきます。氏の文章は、我々の祖先たちの原初の意識の流れ、言語を生み出す過程に思いを馳せ、我々の生を我々自身が、無限に広がる時空の大きな枠組みのなかで位置づけ、意味づける営みをそっと助けてくれます。ぞくぞくするような不思議な意識の旅にいざなってくれる本。
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