ジョン・ディクスン・カーの代表作の一つと言われる本作ですが、ギディオン・フェル博士が探偵役として活躍する作品群の中では最高傑作かもしれません。
英国の准男爵ジョン・ファーンリ卿のところに、現在のジョン卿は偽者であり、自分こそが本物のジョン・ファーンリであると主張する男が現れます。かつて素行の悪かったジョン少年は、勘当同然に米国の親戚のところへ送られたのですが、そのときに乗ったのが、かのタイタニック号であり、沈没の混乱に乗じて別の少年と入れ替わったのだというのです。
判別の切り札として、米国行き以前に取った指紋帳の存在が明らかとなり、照合しようとしていたまさにそのとき、現在のジョン卿が庭で亡くなります。そして、その騒ぎの中、指紋帳が何者かによって盗まれます。
卿の首には切り傷がありましたが、そばに凶器はなく、一方、卿が倒れたときには周りに誰もいなかったとの目撃証言が得られます。果たして自殺か、はたまた他殺か。
カー(=カーター・ディクスン)の作品の特徴は、密室を始めとする不可能犯罪と怪奇趣味、そしてロマンスですが、この作品はそのバランスがうまく取れ、また、フーダニットとハウダニットの両方の興味が最終盤まで持続させられます。
謎が解き明かされると「なーんだ、そういうことか」と拍子抜けさせられるような気分になりますが、逆にこれこそが素晴らしいトリックの証しです。
私はこれまで、フェル博士ものの長編は、「三つの棺」、「緑のカプセルの謎」、「囁く影」、「死者はよみがえる」(「死人を起す」)及び「帽子収集狂事件」の五作を読んでいますが(順番は私の評価の高さ順です)、「曲った蝶番」は名高い「三つの棺」に匹敵するか、それ以上だと思います。
カー作品が好きな人には絶対お勧めの一冊です。