凶暴化ハルト人に襲われ命からがら戦艦《レッドホース》を脱出しノーマル・ハルト人に救助されたテケナーとジェニファーの恋人達の舞台を惑星テルツロックに変えての波乱万丈の逃走劇を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第413巻。本巻の執筆者は稀な事に前巻から三話連続登板となるフランシスです。今回のエピソードでは怪力無双の4メートル級ハルト人に何度も投げ飛ばされて骨折する等まさに満身創痍のテラナー二人なのですが、幸い二人が共に細胞活性装置保持者なので忽ち体が元通りに回復してしまうという仕組みは実に上手く出来ているなと感心させられました。
『追放者の惑星』H.G.フランシス著:テラナー二人が連れて来られたハルト人の惑星テルツロックではノーマルなレルツ船長が代表する穏健派と4メートル級の粗暴なロスが率いる急進派に分かれて対立していた。レルツ船長の庇護の下に何とか船内で生き延びて来た二人だったが、命を狙って宇宙港へと押し寄せる凶暴化ハルト人の群れに堪らなくなり戦闘グライダーで過疎地帯へ逃亡を図る。本編では過酷な環境の中でも決してユーモアを忘れずに冗談口を交わしながら互いを思い遣り助け合って進んで行くテクとジェニーの恋人たちの姿に勇気をもらえます。途中63頁から2頁だけ挿入された‘それ’ならぬ‘これ’が主役の謎めいた物語の意味が非常に気になりますが果たして何時か読める日が来るのでしょうか?忘れぬ様記憶に留めておきましょうね。『暴力クリスタル』H.G.フランシス著:二人は偶然遭遇した奇妙なクリスタルの森に疑惑を感じながら虜囚の獅子人間グラドのジェイナールや穏健なハルト人ダルグと出会って逃亡生活を続ける中で次第に秘密の核心に迫って行く。本編ではハルト人の秘密の真相自体には左程の驚きは無く想定内でしたが、やはり一番の肝は穏健派の科学者タルスの息子なのに過激なロスに惑わされ親に逆らってテラナーの命を執拗に狙うハルト人の子供バルクが幾度も愚行を繰り返しながらもやがては真実に目覚めて改心する人間ドラマに大きな感動が込み上げて来る素晴らしいラスト・シーンでしょう。
本巻の翻訳者、五十嵐洋氏のあとがきは411巻の続きの海底軍艦・轟天号の話で、今回は偶然にプラモデルの創作意欲が湧いて妄想がどんどん膨らんだマニアックな凝り性振りを披露されています。テラナー二人の苦労が報われてラストでようやく一筋の光明が見出され「さあ、これから反撃開始だ!」という所ですが、またもや次巻からはエラートやコンセプト・ヴァンネが活躍する別な局面の故郷銀河編がスタートする模様で、気持ちを切り替え頭が混乱しない様に過去の巻も読み返して新たな展開に備えたいと思います。