過日、NHKの番組で、著者の山極寿一がかつてフィールドワークを行なったマウンテンゴリラのいるルワンダを20数年ぶりに再訪する番組を観た。これは感動的なものであり、ゴリラの生態と彼の地の戦争状態の不幸が密接につながっていることをわからせてくれた。こういう番組をやるのであれば喜んで料金を支払えるというものだ。ポアンカレ予想を解いたペレルマンの番組以来の感動であった。
20数年前に出会った6歳のオスゴリラは、いまやシルバーバックとして群れを率いるボスとなっていたが、彼は山極を明らかに覚えており、再会の場では山極から視線を離さない。何ということだろうか! 言葉を失ってしまった。
山極は、今西錦司、伊谷純一郎、河合雅雄らの京大の世界的な霊長類研究の伝統を継ぐ学者であると知っていたが、今回初めてその著書を読んだ。
今西の動物社会学的な仕事には、あまりにも人間社会と動物社会を直結させすぎるという気がして、ほんまかいなという感想を持っていた。
現在、その研究の成果はどのようなものとして認識されているのだろうか。その一端は本書にも見えるが、ゴリラ社会がゴリラの群れの原理を変えてしまい、それによって必然的にゴリラ個々の在り様を変えていくという当然の成り行きについて、そしてその研究が少なからず人間を照らし出すということが本書によってよくわかると思われる。
熟読に価する1冊だ。